Link by RainDrop & Frank sozai
忍者ブログ [PR]
カンボジア・シェムリアップでの日々の生活。
GIOS PURE FLATとPENTAXと柔道クラブと・・・
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今日も文と写真は関係ありません。
バイクも無事に直ったので、次の日曜日、今度はコーケー遺跡だけに行くことにした。
この一週間で情報収集をし、道路状況や周辺の町について以前よりは多少の知識を得ていた。
準備は万端のつもりだった。
今回は家の近くでガソリンを満タンにし、出発。
時刻は前と同じAM6:00。
1時間20分後、料金所へ到着。休憩も取らずに来た。
料金所のオヤジが覚えていたらしく、話しかけてくる。
「そのバイクはいくらだった? 譲ってくれないか?」
しまいには「俺のカブと交換してくれ。」
するわけないだろ。
料金を払いコーケーへと進む。
途中の小さな町で休憩をとる。
気がつけば朝食も食べていない。屋台でミーチャー(焼きそば)を頼んだ。
朝食をとっている間、観光客らしき車が通り過ぎて行く。
朝食を済ませ、先を急ぐ。
街を出て、20km位だったろうか、またバイクに異変が起きた。
急にリアタイアが横に滑りだした。
パンク?
止まってみてみると、見事にタイアが潰れていた。
事前の情報収集でこの先何もない事が判っているので、さっきの町まで引き返すことにした。
パンクしているのでゆっくりとしたスピードで戻る。
5km位進んだ時、またバイクに異変が起きた。
なんと修理したばっかりのクラッチが滑り出した。
パンクしているせいで余計に負荷が掛かったのだろう、たちまちスピードが出なくなる。
400mも進まないうちに全く進まなくなってしまった。
街まであと15km以上はある。
しかしバイクを置いて行くわけにもいかない。
灼熱の炎天下。パンクしたバイクを押すことになった。
エンジンは動く。けど走らない。捨てて行こうかとも思ったが、捨てきれなかった。1時間ほど押した。持ってきた水も残り少ない。アスファルトの照り返しが肌を焼く。でも前に進む。
さらに30分。
バイクを止め、その影でたばこを吸おうとしたら、汗でヨレヨレになっていた。
アスファルトに並べ乾かす。さすが南国、2・3分でカリカリになった。
パンクしたタイアを見てみる。
パンクではなく、空気を入れるバルブがちぎれて無くなっていた。
街まで行ってもダメかもしれない。
でもここにじっとしてるわけにもいかない。
諦めてまた押し始めた。
さらに30分。
背後でバイクの音がした。こっちに向かってきてる!
肉眼でまだ2cm位の大きさにしか見えなかったけど、手を振った。
気づいたのかどうか判らないが淡い期待を抱き、ただ待っていた。
若い兄ちゃんだった。カンボジア人特有の人懐っこい笑顔で寄ってくる。
どうやら近所の村人らしく英語は通じない。でも状況は伝わった様だ。
バイクをじっと見ていたかと思ったら、突然奇声をあげて藪の中に入って行った。
だめかも知れない。
そう思ったけど、しばらく待つことにした。
たばこを2本ほど吸い終わった頃、藪の中から鼻歌が聞こえて来た。戻って来たようだ。
藪から出て来た彼は、手に二本の長い蔓を持っていた。
なるほどね。これを取りに行ってくれたんだ。
蔓を器用にバイクに結び始める。反対側を自分のバイクに結んだ。
言葉は通じないが何をしたいかはわかる。
出発の合図はアイコンタクトだった。
快適。
彼のHONDA DREAMに引かれ進み始めたバイクはとても心地よかった。
汗が一気に引いて行く。
この状況が面白かったので、牽引されながら写真を撮ろうとカメラの電源を入れる。が入らない。
電池切れ。
行かなくて良かった。全然準備万端じゃなかった。
兄ちゃんは鼻歌を歌ってる。周りには何もない。何でか解らないが楽しくてたまらなくなり、大声で笑っていた。
途中何度か、蔓が切れたり、パンクしているのでまっすぐ進まず藪に突っ込んだりと色々あったが、何とか街に到着。
スクーター以外も修理出来るらしい、バイク屋まで連れて行ってくれた。
お礼に数ドル払う。ドル札を握りしめ彼は笑顔で消えていく。
バイク屋と話をする。が、どうやらすぐには修理できないと言う。
トラックを探したが今日は全部出てしまったらしい。結局置いて行くことになった。
シェムリアップまであと60km。
バイタクを捕まえて帰る事にした。
3人に断られた。理由は遠いから。そりゃそうだよな。
4人目のオヤジはちょうどシェムリアップに用事があるので乗せてくれるという。
これで家まで帰れるはずだった。
もう間もなくベンメリアへの分かれ道というところまで来た時、またまた、バイクに異変が起きた。
突然パワーがなくなる。なんだ?
タンク周辺を指差しながら、オヤジが言う。「オッミエン。」 ガス欠らしい。
カンボジアでは道端の屋台でガソリンを売っている。そこまで、オヤジと一緒にバイクを押すことになった。
ついて無い時はこんなもんだ。
AM6:00に出たのに、シェムリアップに着いた頃は夕方だった。
コーケーまでの道のりは遠い。
つづく
バイクも無事に直ったので、次の日曜日、今度はコーケー遺跡だけに行くことにした。
この一週間で情報収集をし、道路状況や周辺の町について以前よりは多少の知識を得ていた。
準備は万端のつもりだった。
今回は家の近くでガソリンを満タンにし、出発。
時刻は前と同じAM6:00。
1時間20分後、料金所へ到着。休憩も取らずに来た。
料金所のオヤジが覚えていたらしく、話しかけてくる。
「そのバイクはいくらだった? 譲ってくれないか?」
しまいには「俺のカブと交換してくれ。」
するわけないだろ。
料金を払いコーケーへと進む。
途中の小さな町で休憩をとる。
気がつけば朝食も食べていない。屋台でミーチャー(焼きそば)を頼んだ。
朝食をとっている間、観光客らしき車が通り過ぎて行く。
朝食を済ませ、先を急ぐ。
街を出て、20km位だったろうか、またバイクに異変が起きた。
急にリアタイアが横に滑りだした。
パンク?
止まってみてみると、見事にタイアが潰れていた。
事前の情報収集でこの先何もない事が判っているので、さっきの町まで引き返すことにした。
パンクしているのでゆっくりとしたスピードで戻る。
5km位進んだ時、またバイクに異変が起きた。
なんと修理したばっかりのクラッチが滑り出した。
パンクしているせいで余計に負荷が掛かったのだろう、たちまちスピードが出なくなる。
400mも進まないうちに全く進まなくなってしまった。
街まであと15km以上はある。
しかしバイクを置いて行くわけにもいかない。
灼熱の炎天下。パンクしたバイクを押すことになった。
エンジンは動く。けど走らない。捨てて行こうかとも思ったが、捨てきれなかった。1時間ほど押した。持ってきた水も残り少ない。アスファルトの照り返しが肌を焼く。でも前に進む。
さらに30分。
バイクを止め、その影でたばこを吸おうとしたら、汗でヨレヨレになっていた。
アスファルトに並べ乾かす。さすが南国、2・3分でカリカリになった。
パンクしたタイアを見てみる。
パンクではなく、空気を入れるバルブがちぎれて無くなっていた。
街まで行ってもダメかもしれない。
でもここにじっとしてるわけにもいかない。
諦めてまた押し始めた。
さらに30分。
背後でバイクの音がした。こっちに向かってきてる!
肉眼でまだ2cm位の大きさにしか見えなかったけど、手を振った。
気づいたのかどうか判らないが淡い期待を抱き、ただ待っていた。
若い兄ちゃんだった。カンボジア人特有の人懐っこい笑顔で寄ってくる。
どうやら近所の村人らしく英語は通じない。でも状況は伝わった様だ。
バイクをじっと見ていたかと思ったら、突然奇声をあげて藪の中に入って行った。
だめかも知れない。
そう思ったけど、しばらく待つことにした。
たばこを2本ほど吸い終わった頃、藪の中から鼻歌が聞こえて来た。戻って来たようだ。
藪から出て来た彼は、手に二本の長い蔓を持っていた。
なるほどね。これを取りに行ってくれたんだ。
蔓を器用にバイクに結び始める。反対側を自分のバイクに結んだ。
言葉は通じないが何をしたいかはわかる。
出発の合図はアイコンタクトだった。
快適。
彼のHONDA DREAMに引かれ進み始めたバイクはとても心地よかった。
汗が一気に引いて行く。
この状況が面白かったので、牽引されながら写真を撮ろうとカメラの電源を入れる。が入らない。
電池切れ。
行かなくて良かった。全然準備万端じゃなかった。
兄ちゃんは鼻歌を歌ってる。周りには何もない。何でか解らないが楽しくてたまらなくなり、大声で笑っていた。
途中何度か、蔓が切れたり、パンクしているのでまっすぐ進まず藪に突っ込んだりと色々あったが、何とか街に到着。
スクーター以外も修理出来るらしい、バイク屋まで連れて行ってくれた。
お礼に数ドル払う。ドル札を握りしめ彼は笑顔で消えていく。
バイク屋と話をする。が、どうやらすぐには修理できないと言う。
トラックを探したが今日は全部出てしまったらしい。結局置いて行くことになった。
シェムリアップまであと60km。
バイタクを捕まえて帰る事にした。
3人に断られた。理由は遠いから。そりゃそうだよな。
4人目のオヤジはちょうどシェムリアップに用事があるので乗せてくれるという。
これで家まで帰れるはずだった。
もう間もなくベンメリアへの分かれ道というところまで来た時、またまた、バイクに異変が起きた。
突然パワーがなくなる。なんだ?
タンク周辺を指差しながら、オヤジが言う。「オッミエン。」 ガス欠らしい。
カンボジアでは道端の屋台でガソリンを売っている。そこまで、オヤジと一緒にバイクを押すことになった。
ついて無い時はこんなもんだ。
AM6:00に出たのに、シェムリアップに着いた頃は夕方だった。
コーケーまでの道のりは遠い。
つづく
PR
こっちに来てすぐバイクを買った。
HONDAのSL230。
って話は何回か前にした。
今日はその話。
カンボジアに来てすぐ、うちのボスの粋な計らいで、アンコール周辺遺跡をガイド付きで回らせてもらった。
それですぐに遺跡の魅力にはまってしまい、さらに遠方の遺跡も見たくなった。
ある日曜日、まだ雨季も明けておらず、道はぬかるんでいたがベンメリアとコーケーへ行く事にした。
ベンメリアまで約60km、コーケーまで120km。日本なら軽いツーリングコースだ、とちょっとなめていた。
朝6:00出発。国道6号線を南へ20分ほどでロリュオスへ到着、止まらずに進む。
40分。中継地のドムデックへ到着。なかなかいいペースだ。
ガソリンを入れるついでにコーラを買う。1500R。
売り場に置いてあるオレンジ色のクーラーボックスに腰掛けて飲む。
バイクでのツーリングはやはり気持ちいい。
休憩を終え、6号線を左に折れベンメリア方面へ向う。
以外にも道は奇麗に舗装されている。もし日本から友人が来るようなことがあれば、ここをツーリングコースにしようかな、なんてことを考えながらさらに進む。
出発して、1時間30分ほどたった頃。料金所へ到着。ベンメリア、コーケー両方の入場券を売っている。
とりあえずベンメリアの入場券だけを買った。
速度を落とさせるためだろう、料金所近辺のアスファルトに段が付いている。
構わずアクセル全開で越えていく。料金所のおやじが奇声をあげているので、手を振って答える。
数分でベンメリアへ到着。
すげーよ、ここ。
崩壊が激しい。まだ雨季だったせいもあり、コケが遺跡を覆っている。
観光客も少なく、周りは静寂。自然の音と自分の歩く音しか聞こえない。
青々とした木々が遺跡をとり囲み、さらにガジュマルの樹が遺跡から伸びていて、人工的な石の彫刻も、自然なもののようにさえ見える。
神秘的だった。
たったの1時間半でほんとに冒険者気分を味あわせてくれた。
ベンメリアをたっぷり2時間程かけて写真を撮り、堪能したら腹が減って来た。
遺跡の目の前にある露店へ行きバイチャー(炒飯)とビールを頼んだ。
店のおやじが話しかけてくる。
ほんとにこっちは気さくな人が多い。
適当に話をし(ほとんど解らなかったんだけど)、勘定をしてコーケーへ向かう。
料金所の近くにコーケーへ曲がる道があったので、そこまで戻らなければならない。
来た道を引き返し、右へ折れ、コーケーの方へ10分程進んだ所でバイクに異変が起きた。
「やべ、クラッチが滑ってる。」
アクセルを開けた時の反応が鈍い。
止まってバイクを見てみたがどうにもならない。あたりを見ても何もない。当然、近所に修理屋なんてなさそうだったので、今日はあきらめて引き返す事にした。こっちに住んでるのだから、また行く機会はある、と軽い気持ちだった。
ほんとに何もない道をまたシェムリアップまで引き返す。
20分程戻ったところで、自分の判断が正しかった事に気付いた。
症状が悪化してきている。
エンジンの回転数を上げても、トップスピードが伸びなくなって来ていた。
ドムデックへ着いた頃は40km/h位しか出ない。
スーパーカブにも抜かれていく。
シェムリアップに着いた頃は自転車にも抜かれるくらいの速度になっていたが、なんとか帰って来た。
バイク屋のおやじが「また来たのか」って顔してこっちを見てる。
「明日取りにくるよ。」
そう言ってバイタクを捕まえて家に帰った。
つづく
HONDAのSL230。
って話は何回か前にした。
今日はその話。
カンボジアに来てすぐ、うちのボスの粋な計らいで、アンコール周辺遺跡をガイド付きで回らせてもらった。
それですぐに遺跡の魅力にはまってしまい、さらに遠方の遺跡も見たくなった。
ある日曜日、まだ雨季も明けておらず、道はぬかるんでいたがベンメリアとコーケーへ行く事にした。
ベンメリアまで約60km、コーケーまで120km。日本なら軽いツーリングコースだ、とちょっとなめていた。
朝6:00出発。国道6号線を南へ20分ほどでロリュオスへ到着、止まらずに進む。
40分。中継地のドムデックへ到着。なかなかいいペースだ。
ガソリンを入れるついでにコーラを買う。1500R。
売り場に置いてあるオレンジ色のクーラーボックスに腰掛けて飲む。
バイクでのツーリングはやはり気持ちいい。
休憩を終え、6号線を左に折れベンメリア方面へ向う。
以外にも道は奇麗に舗装されている。もし日本から友人が来るようなことがあれば、ここをツーリングコースにしようかな、なんてことを考えながらさらに進む。
出発して、1時間30分ほどたった頃。料金所へ到着。ベンメリア、コーケー両方の入場券を売っている。
とりあえずベンメリアの入場券だけを買った。
速度を落とさせるためだろう、料金所近辺のアスファルトに段が付いている。
構わずアクセル全開で越えていく。料金所のおやじが奇声をあげているので、手を振って答える。
数分でベンメリアへ到着。
すげーよ、ここ。
崩壊が激しい。まだ雨季だったせいもあり、コケが遺跡を覆っている。
観光客も少なく、周りは静寂。自然の音と自分の歩く音しか聞こえない。
青々とした木々が遺跡をとり囲み、さらにガジュマルの樹が遺跡から伸びていて、人工的な石の彫刻も、自然なもののようにさえ見える。
神秘的だった。
たったの1時間半でほんとに冒険者気分を味あわせてくれた。
ベンメリアをたっぷり2時間程かけて写真を撮り、堪能したら腹が減って来た。
遺跡の目の前にある露店へ行きバイチャー(炒飯)とビールを頼んだ。
店のおやじが話しかけてくる。
ほんとにこっちは気さくな人が多い。
適当に話をし(ほとんど解らなかったんだけど)、勘定をしてコーケーへ向かう。
料金所の近くにコーケーへ曲がる道があったので、そこまで戻らなければならない。
来た道を引き返し、右へ折れ、コーケーの方へ10分程進んだ所でバイクに異変が起きた。
「やべ、クラッチが滑ってる。」
アクセルを開けた時の反応が鈍い。
止まってバイクを見てみたがどうにもならない。あたりを見ても何もない。当然、近所に修理屋なんてなさそうだったので、今日はあきらめて引き返す事にした。こっちに住んでるのだから、また行く機会はある、と軽い気持ちだった。
ほんとに何もない道をまたシェムリアップまで引き返す。
20分程戻ったところで、自分の判断が正しかった事に気付いた。
症状が悪化してきている。
エンジンの回転数を上げても、トップスピードが伸びなくなって来ていた。
ドムデックへ着いた頃は40km/h位しか出ない。
スーパーカブにも抜かれていく。
シェムリアップに着いた頃は自転車にも抜かれるくらいの速度になっていたが、なんとか帰って来た。
バイク屋のおやじが「また来たのか」って顔してこっちを見てる。
「明日取りにくるよ。」
そう言ってバイタクを捕まえて家に帰った。
つづく
今日の文と写真は関係ありません。
いつものように、いつものところで酒を飲んでいた、とある夜。
カウンターの向こうから
「この前来てた大阪の夫婦のな、奥さんがいい文章書いててん。今ないねんけど。」
いや、無い物を言われても・・・。
じゃ、今度持って来て、と言いかけた時、隣の席から、
「あるよ。」
車に戻り、数枚のコピー用紙を持って来てくれた。
持ち歩いてるんですか?
「たまに読み返すんだよ。」
ふ~ん?っと気のない返事を返し、特に何も考えずに読み始めた。
しばらく読み進むにつれ、彼が持ち歩いている理由がわかった。
嬉しかったんですね?
「自分の事がこんな文章になるとは思わなかったんでね。」
そこには、この店の事、そこに行くまで随分苦労した事、そこで出会った隣に座る人の事、それで二人の旅行がいくらか充実度が増した事などが、素晴らしい文章で書かれていた。
彼曰く、最近変わって来たものの、これまでカンボジアについての文章と言えば、内戦や地雷に関するものばかりだったらしい。自分の事が書かれている事、カンボジアの暗い過去が書かれていない事が、彼の持ち歩く理由らしい。時々は人に見せているのかもしれない。
「ここに10数年住んでるからね。今、ハワイやオーストラリアが言われてるように、カンボジアに住んでるなんて羨ましいと言われたいんだよ。」
思ってりゃいつかそうなりますよ。
この日も遅くまで飲んでいた。
今日の話おわり
次回予告:「教訓」
いつものように、いつものところで酒を飲んでいた、とある夜。
カウンターの向こうから
「この前来てた大阪の夫婦のな、奥さんがいい文章書いててん。今ないねんけど。」
いや、無い物を言われても・・・。
じゃ、今度持って来て、と言いかけた時、隣の席から、
「あるよ。」
車に戻り、数枚のコピー用紙を持って来てくれた。
持ち歩いてるんですか?
「たまに読み返すんだよ。」
ふ~ん?っと気のない返事を返し、特に何も考えずに読み始めた。
しばらく読み進むにつれ、彼が持ち歩いている理由がわかった。
嬉しかったんですね?
「自分の事がこんな文章になるとは思わなかったんでね。」
そこには、この店の事、そこに行くまで随分苦労した事、そこで出会った隣に座る人の事、それで二人の旅行がいくらか充実度が増した事などが、素晴らしい文章で書かれていた。
彼曰く、最近変わって来たものの、これまでカンボジアについての文章と言えば、内戦や地雷に関するものばかりだったらしい。自分の事が書かれている事、カンボジアの暗い過去が書かれていない事が、彼の持ち歩く理由らしい。時々は人に見せているのかもしれない。
「ここに10数年住んでるからね。今、ハワイやオーストラリアが言われてるように、カンボジアに住んでるなんて羨ましいと言われたいんだよ。」
思ってりゃいつかそうなりますよ。
この日も遅くまで飲んでいた。
今日の話おわり
次回予告:「教訓」